ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)とは
ボトックスとは、ボツリヌス菌の産生するタンパク性の毒素を治療に応用した医薬品です。
ボトックスは、神経の接合部の化学伝達物質(アセチルコリン)の阻害により神経を麻痺させることで、効果を発現します。
年齢を重ねると、しわが増えてきて悩みの種となる場合があります。おでこのしわ、眉間のしわ、目尻のしわ、法令線のしわ、マリオネットラインに伴うしわ、くちびるの周りにできるしわ等です。
しかし、表情筋にボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)を作用させることで、これらの表情じわの改善が見られます。
また、肥大した筋肉にボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)を投与すると、筋肉に麻痺が起こり廃用萎縮が起こります。
咬筋が非常に発育していると顔が四角く大きい感じを受けます。
あごから肩にかけて存在する僧帽筋(そうぼうきん)が張っていると、あごが短くいかり肩になります。
ふくらはぎでも、腓腹筋(ひふくきん)やひらめ筋が発達していると、足が太く短く見えます。いわゆる「大根足」といわれるものです。
これらの筋肉に適量のボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)を注射投与することで、筋量を低下させることができます。
これらのボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)治療の大半は、日本の厚生労働省ではまだ認可されていないものも多く見受けられます。
現在、日本の厚生労働省で認可されているボツリヌストキシン製剤(ボトックス)の治療は、
- 眉間のしわ
- 目尻のしわ
- 眼瞼痙攣
- 源発性腋窩多汗症
- 片側顔面痙攣
- 痙性斜顎
- 上肢痙縮
- 2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足
- 重度の原発性腋窩多汗症
- 斜視
- 痙攣性発声障害
に限られていますが、海外ではもっと多くの疾患に対してボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)を使用して治療が行われています。
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による顔面表情じわの治療
厚生労働省が認可しているボツリヌストキシン製剤(ボトックスビスタⓇ)を利用した顔面表情筋の抑制によるしわ治療は、以下の2箇所に注入します。
眉間のしわ
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 10〜20U(5点)
目尻のしわ
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 12〜24Uまで(6点のみ)
海外では、ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による治療法が多数報告されています。
海外で行われている顔面表情筋の抑制による治療法には、日本で行われている眉間のしわと目尻のしわ以外にも次のような治療が行われています。(以下は、2019年10月現在日本では認可されていません)
おでこ(前額)のしわ
ボツリヌストキシン製剤(ボトックス)注入量 : 10〜20U(4〜5点)
ガミースマイル(笑うときに上歯茎が見える)
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 8U(2点)
口角挙上(唇の両側が上に向いている状態をつくる)
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 8〜24U(4〜6点)
口唇周囲のしわ
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 16〜40U(8〜10点)
顎先(おとがい)のしわ(あごの梅干ししわ)
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 4〜16U(2〜4点)
バニーライン(目頭から鼻根部のしわ)
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 12〜24U(4〜6点)
くびのしわ
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 12〜32U(6〜8点)
海外では、ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による筋萎縮作用を利用した治療法が報告されています。
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による筋萎縮作用とは次のようなものです。
骨格筋(横紋筋)は、動かさないでいると廃用萎縮を起こします。逆に運動を行うと発達して肥大します。ボディビルダーのしっかりとした筋肉がよい例です。
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)を筋肉に作用させると、筋肉に入り込む神経の刺激を遮断することで、筋肉の動きをストップさせます。それにより、筋肉に廃用萎縮が起こり、小さく縮むことがわかっています。これを治療に応用したものが、ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による筋萎縮作用による治療法です。
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による小顔治療(咬筋縮小)
咬筋は、下顎骨(かがくこつ)のえらの部分を覆っている比較的大きな筋肉です。
頬を触りながら奥歯を噛みしめると、咬筋の膨らみを感じることができます。
咬筋が発達している人は、顔が下膨れで四角い大きな顔に感じられます。そこで、咬筋部にボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)を注入し作用させると筋の萎縮が起こり、顔の下半分が小さく感じるようになり、顔の輪郭がすっきりして見えます。
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 50〜150U
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)によるいかり肩や猪首の治療(肩から首筋の筋肉の縮小)
肩から首にかけては、広大な僧帽筋(そうぼうきん)という菱形の筋肉があります。いかり肩や猪首といわれる、顎が肩に埋まっている体型の人は僧帽筋が張っていたり筋肉そのものが大きいことが挙げられます。
そこで、ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)を注入して作用させ、僧帽筋を萎縮させることでなで肩で顎が長く見えるシルエットになり、ほっそりとした長い感じの顎を表現できます。
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 100〜150U
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による大根足の治療(ひざ下の後ろの筋肉の縮小)
下肢へのボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)の注入では、いわゆる大根足の治療法があります。
ひざ下の後ろには、腓腹筋(ひふくきん)やヒラメ筋という大きく力強い筋肉があります。これらが発達していると、足が太く見えいわゆる「大根足」といわれる状態になります。ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)をこれらの筋肉に注入して筋肉の運動障害が出ない程度に萎縮させると足がほっそりした感じになります。
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 100〜300U
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)による脇汗(原発性腋窩多汗症)の治療
重度の原発性腋窩多汗症のボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)治療は、健康保険で治療できます。
1回の治療で4〜9ヶ月の治療効果があります。
原発性腋窩多汗症
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)注入量 : 100U
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)の薬剤情報(合併症、リスクなど)
禁忌
- 神経筋接続障害 : 重症筋無力症、筋萎縮性硬化症、ランバートイートン症候群等
用法用量の注意
- 3ヶ月間でのボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)の使用量は、360U(単位)以内までです。
- 妊娠をしている方への投与はできません
- 女性の場合、ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)投与後は2ヶ月間は避妊をしてください。男性の場合は、3ヶ月間避妊をおこなってください。
併用注意
- 筋弛緩薬
- 抗生剤
- 閉塞
- 隅角緑内障
- 抗痙攣剤
- 精神安定剤、睡眠導入剤
副作用・合併症
- 嚥下障害
- 呼吸障害
- 痙攣発作
- ショック、アナフィラキシー(アレルギーによる)
- 角膜の障害
- 顔面表情の低下
- 眼瞼下垂症状
- 感覚麻痺、自律神経失調症、めまい、頭痛、筋肉痛、歩行障害、脱力感
その他
注射投与であるため、注射部位に少量の内出血を生じることがあります。
リスク・副作用
- 疼痛、腫脹
- 頭痛、自律神経失調
- 顔面麻痺、口角下垂
- 眼瞼及び眉毛下垂、閉瞼下垂(瞼が閉じにくくなる)
- 局所性筋力低下
- 内出血
ボツリヌストキシン製剤(ボトックスⓇ)の施術料金
項目 | 金額 (消費税込) |
---|---|
1点(2ユニット)あたり | 2,750円 |
田中Drの場合は1ユニット | 2,200円 |
眉間のしわ | 13.750〜44,000円 |
目尻(両側) | 16.500〜35,200円 |
額のしわ | 11,000〜22,000円 |
あごのしわ(梅干しシワ) | 11,000〜26,400円 |
わき(多汗症)(両側) | 137,500円 |
咬筋萎縮(両側) | 60,500〜137,500円 |