自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入の概要
通常の脂肪注入では、定着率がせいぜい20%程度だといわれてきました。
一度組織から離された脂肪組織が、それでも定着する理由は、単に脂肪吸引で得られた単純な脂肪組織の中にもわずかに脂肪由来幹細胞が含まれているからです。
これに対し、脂肪由来の幹細胞を多量に含む脂肪注入では、幹細胞が活発に働き、毛細血管や繊維芽細胞を新生させるため、より多くの脂肪組織が定着します。
そこで、患者さまから脂肪組織を採取し、これから脂肪幹細胞(脂肪由来MSC)を分離・培養します。脂肪幹細胞が5000万個から1億個に増幅したら、これを通常の脂肪と混合し、患者さまの必要な所に注入します。
この治療法のことを自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入法といいます。 通常の脂肪注入に比べ、その定着率はかなり高まり、満足度の高い結果をもたらします。
さらに、多量の脂肪由来幹細胞は、真皮に働きかける成長因子を多数放出するため皮膚の若返り(レジュビネーション)感や肌の張りの改善に期待が持てると考えられています。
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入ができる場所
顔面の皮下組織
乳房の豊胸
その他、皮下脂肪組織の不足している部位
自家培養脂肪幹細胞による脂肪注入の欠点利点
メリット
自家組織の移植のため免疫反応やアレルギーはありません。自家組織として必ず一部が自分の組織として定着します。 通常の脂肪注入より高い定着率を示します。
デメリット
ドナーの採取から脂肪注入に至るまでには、2ヶ月ほどの培養時間が必要です。
脂肪由来幹細胞を分離培養するためには、あらかじめ脂肪組織を採取する必要があります。場合によっては、複数回の施術が必要なことがあります。脂肪吸引により、脂肪が採取できない場合は脂肪注入自体ができません。
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入の手術時間と術後の経過
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入を行うには、脂肪由来幹細胞の分離培養が先立ちます。
最初に、臀部など脂肪の多い体表面から2cc程度の脂肪組織を採取します。これを国から許可を得たCPF(Cell Processing Facility)と云う細胞培養加工施設に送ります。この際できる傷跡は2〜3cm程度の小さな傷で採取されます。脂肪組織採取の手術時間は30分程度です。
CPFでは無菌状態で幹細胞(MSC)を分離したのち、これを培養し、多数の脂肪由来幹細胞を作成します。幹細胞(MSC)が5000万個から1億個にするのに2ヶ月程度の期間が必要です。
脂肪由来幹細胞が5000万個から1億個に生成されると脂肪注入が可能になります。
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入の際は、注入の前に、あなたの脂肪組織を脂肪吸引で10〜15cc程度採取します。これに、MSCを加え(1cc程度(5000万個以上))脂肪由来幹細胞含有脂肪を作成します。この過程では、なるべく無菌状態で行うために安全キャビネットの中で調合します。
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入は、脂肪組織増大希望部位にやや太い針で注入されます。注入の前に局所麻酔を施しますので、注入時に痛みはありません。
脂肪組織採取部位は、5mmほどの傷で縫合の必要はありません。採取後、サポータなどで1週間程度軽く圧迫をしておきます。注入部位は小さな注射の跡がありますが、傷跡として残ることはありません。
手術時間は脂肪吸引を含め、1時間程度です。
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入のアフターフォロー
脂肪組織採取部位は術後包帯とサポーター等で圧迫を加えます。1週間後に抜糸を行います。脂肪注入部位は軽い消毒だけで解放とすることができます。抜糸は必要ありません。
シャワー浴や洗顔、洗髪は翌日から可能です。全身浴は術後4〜5日から可能になります。
脂肪組織採取部位と脂肪注入部位に内出血がおこることがあります。注入部位では2週間程度、採取部位では1ヶ月程度で皮膚の色合いも落ち着きます。 脂肪注入部位には、一時的に腫れた様な膨らみや凹凸感がありますが、2週間程度で落ち着くことが多いと考えます。また、後日多少の硬結がおこることがあります。目立つことはありません。時間の経過とともに改善します。
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入の詳細情報
手術時間 | 幹細胞培養用脂肪組織採取:30分 脂肪注入:1時間 |
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術後の注意 | 腫れが週間程度続く。採取部位に小さな傷跡が残る |
カウンセリング当日手術 | 不可 |
入院 | 不要 |
麻酔 | 局所麻酔、静脈麻酔 |
その他 | 幹細胞培養に2ヶ月ほどかかる |
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入のリスク(合併症・副作用)
【合併症 副作用等】
感染:細菌やウイルス等による炎症。
血腫:術後、皮下に血液が貯留すること。
出血・内出血:皮下に血液の血球が浸透し、皮膚が紫青色を呈すること。
瘢痕:傷跡。人間の皮膚はやや大きな傷をつけられると、傷跡ととして残る。
肥厚性瘢痕(ケロイド):傷跡の中でも膨らみや硬さが強く出ることがあります。これは、遺伝性のため防御はできませんが、治療法はあります。
色素沈着:傷跡の最終段階でメラニンが沈着することが通常です。時間の経過とともに減少します。
予定形態との差、微妙な左右差:人間の体、顔は左右差があります。これは脂肪注入をおこなったとしても、残る場合があります。また、予定の状態を完全に表現することは難しいと言われています。
凹凸感:いずれは平坦化してきます。
皮下の硬結:注入脂肪の変性や石灰沈着などが原因です。場合によってはステロイドの注射治療を行います。
脂肪組織吸引後の陥凹:脂肪組織吸引部が微妙に陥凹することがあります。なるべくこれが起こらないような脂肪組織吸引を心がけます。
治療料金・キャンセル料金
下記メール宛お問い合わせ下さい。
info@sakai-saisei.com
自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入の実際
脂肪由来幹細胞の培養用の脂肪組織の採取
今回は、臀部よりドナーとなる脂肪組織を採取していきます。紫色の部分が切開予定線です。
脂肪組織採取部位は丁寧に縫合します。
CPCでの脂肪由来幹細胞の分離と培養
以上、患者様の脂肪組織採取と採血が終了とすぐに、CPCへ材料が配送されます。CPCではすぐに、細胞分離と細胞培養を開始します。
酒井形成外科の提携CPCである、株式会社セルバンク内での脂肪由来幹細胞分離をおこなっている様子です。
培養室で脂肪幹細胞がトータル5000万個〜6000万個になるまで2ヶ月ほどかかります。
予定数の幹細胞が観察できると、注入療法の手術日を決定します。
幹細胞の状態確認とカウントを行なっています。
培養で増加した脂肪由来幹細胞です。
組織の切除とともに患者様の血液を200cc ほど採取します。脂肪由来幹細胞の培養は患者様自身の血液を利用するためです。
3)自家培養脂肪由来幹細胞による脂肪注入の実際
PCにてしっかり活動できる脂肪由来幹細胞が5000万個から6000万個に増殖しうると、酒井形成外科に連絡が行きます。
CPCでは、細胞分裂を静止させ、手術日まで冷凍保存します。
酒井形成外科での脂肪注入手術の予定日に脂肪由来幹細胞を解凍とし、細胞の活発さを確認して専用車両でクリニックに搬送されます。
クリニックへ搬送するまえの検査です。
基本的には注入手術の朝脂肪由来幹細胞(5000万個〜7000万個)が届きます。
クリニックでは専用の細胞冷蔵庫で手術まで保存します。
CPCから送られてきた、5000万個以上の脂肪由来幹細胞。
この後、冷蔵保存されます。
幹細胞の状態確認とカウントを行なっています。
【1】患者様の脂肪注入部位のデザイン
手術担当医が患者様の希望部位を聴取しながら脂肪注入部位にマーキングを来ないます。
続いて、注入用脂肪の採取を行います。
大腿部から採取した患者様の脂肪組織
脂肪由来幹細胞(5000万個〜6000万個)含有脂肪細胞混和細胞を注入用注射器に分包して顔への注入の準備をします。
注射器で顔の陥凹部に脂肪由来幹細胞を少しずつ注入していきます。