フェイスリフトを理解するための解剖学

顔の解剖学

fig1.正面
fig2.側面

SMASとリガメント

フェイスリフトを知る上で、重要なキーワードに、SMASとリガメントがあります。

顔面において頭側は、帽状腱膜からおこり各種の表情筋を含みながら、下方は広頸筋にいたる一連の膜様組織をSMASスマスとよびます。
SMASは、側面に於いて帽状腱膜から側頭筋膜(そくとうきんまく)に至り広頸筋(こうけいきん)に連なります。
側面において、SMASの下には耳下腺という唾液を産生する器官が存在します。この耳下腺の中を貫くように顔面神経が顔の四方に広がりますが、これはあくまでもSMASの下に神経の枝を広げているのです。
耳下腺より下にある深部の筋肉や骨膜からは、深部リガメント(ディープ・リテイニング・リガメント)が起こり、テーブルの脚のようにしてSMASを支えています。

顔面神経

脳から直接出る神経は12対あります。顔面神経は、その7番目にあたる第7脳神経です(fig3)。
脳から出た顔面神経は、頭蓋底の顔面神経管を通り茎乳突孔からSMASの下面に顔を出します。そこは丁度外耳孔の直下の所です。そこから耳下腺の中を通りSMASの末梢まで枝を伸ばします。
顔面神経は、耳下腺の中で5本に枝分かれます。上から側頭枝、次に頬骨枝、頬筋枝、下顎縁枝、頸枝と概ね5本にわかれていきます。
顔面神経は、運動神経で顔の表情を作る多数の表情筋を支配します。

fig3.SMAS下にある顔面神経
fig4.各種リガメントとSMAS、顔面神経の関係

SMASの下は神経と血管のネットワーク

ほお部のSMASを下から支えている深部リガメントは、頬骨リガメント、咬筋リガメント、下顎骨リガメントがあります。
リガメントに支えられたSMSの下には、顔面神経や血管のネットワークとともに耳下腺と耳下腺管が存在します。これらはどれも傷つけてはなりません。
SMASの上面は皮下脂肪があるだけで特に危険なものがありません。

深部リガメントはSMASを越えるとレティナキュティスという細かな繊維に多数枝分かれし、顔面頬部の皮膚に入り込んでいることが分かっていますので、SMASの上を大きく剥離する事で、深部リガメントの影響を緩和させることができます。

fig5.顔面下部の構造

老人の顔って、なぜ、みんな似てくるの?

fig6.若い頃
fig7.老人

SMASを支えるリガメントは、しっかりした繊維組織です。その中には、神経も入っています。
若い頃は、皮下脂肪も真皮も皮膚もしっかりしてピンと張っています(fig6)。
しかし、長い月日の間に人の皮膚は、老化が起こして薄く伸びきって張りが無くなってきます(fig7)。

リガメントは、硬くはなってきますが、その位置をほぼキープするため、皮膚や皮下組織がその上に垂れ込むように重なってくると、それは深い法令線やマリオネットライン、ミッドチークライン、あるいは目袋を作り出してしまうのです。これらの老化の印は、人種を問わず皆さんに現れてくるため、老人の顔はみな一緒に見えてくるのです。

fig8.老人特有の深いしわと関係するリガメント