プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術とは
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術は、鼻根部(鼻の根元)も高くしたいが、鼻尖部も尖らせたい、という方にお勧めの美容外科の手術です。
隆鼻というとシリコーンプロテーゼを使用する専門医と肋軟骨を削り出した自家組織使用する専門医と意見が分かれます。
歴史的にはシリコーンプロテーゼが開発される前は肋軟骨削り出しによる隆鼻が一般的な時代があったようです。しかし、肋軟骨隆鼻の鼻は大きく、硬く、柔軟性がなく、手術を受けた患者様から「不自然」と言われたようです。さらに肋軟骨は10年程度で石灰沈着がおこり、かなりの確率で変形してしまうようです。また、肋軟骨を採取すると胸に変形瘢痕が残り、軟骨採取も面倒だったのだと思います。
初期の頃のシリコーンプロテーゼは肋軟骨の硬さに合わせ「硬いプロテーゼ」だったのですが、最近のものはかなり柔らかく柔軟でしなやかになりました。
かつての硬いプロテーゼを使用した隆鼻では、プロテーゼの先端で鼻尖部(鼻先)の皮膚が圧迫され、皮膚が破損しプロテーゼの脱出と鼻尖部皮膚の変形が起こることがあったようです。そのため、プロテーゼによる隆鼻は危険だともいわれました。
しかし、近年ではプロテーゼのシリコーン素材が柔らかくなり鼻尖部を薄く仕上げるかまたは鼻尖部だけ耳介軟骨で形成すれば、自然で柔軟性の高い隆鼻が可能になりました。また、当院での経験では20年経過した症例もほぼ正常な状態を保っています。
耳介軟骨と肋軟骨
人体の中で『軟骨』は肋骨の前方、耳、鼻、関節の中などに存在します。では軟骨はすべて同じかといえば実は2種類あるのです。一つは硝子軟骨、もう一つは弾性軟骨です。
硝子軟骨:肋軟骨、関節軟骨
硬く、しっかり形を作る軟骨、加齢とともに殆どが石灰化により硬く脆くなる。肋軟骨は、人体内での量が豊富
弾性軟骨:耳介軟骨、鼻軟骨
比較的柔らかく柔軟性に富む軟骨、加齢によっても質が変わらない。人体内での量がきわめて少ない。
鼻の形態は弾性軟骨で作られています。そこで、鼻を形成するとしたら耳介軟骨が理想なのですが、圧倒的に量が足りません。
そこで、肋軟骨を使ってしまうしかない時代があったのです。おそらく、硝子軟骨も弾性軟骨も『軟骨』と呼ばれるため、使いやすい肋軟骨が選択されたと想像できます。
肋軟骨隆鼻とプロテーゼ+耳介軟骨隆鼻の違い
肋軟骨 | プロテーゼ+耳介軟骨 | |
---|---|---|
鼻の柔軟度 | 極めて硬い・動きが悪い | かなり柔らかい・自然 |
石灰化 | ほぼ全例 | 少ない |
形の美しさ | 良い | 良い |
修正 | 困難 | 簡単 |
抜きやすさ | 極めて困難 | 極めて簡単 |
おそらく、かつてプロテーゼによる問題が指摘されたため、人体内で同じ軟骨という名前がついている肋軟骨を使うことがより良いとされた時期があったのだと考えます。
しかし、肋軟骨使用の鼻形成では石灰化による変形が起こりやすく、また、肋軟骨の除去も難しく、その後の修正がきわめて困難なことは述べられていません。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術の欠点と利点
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のメリット
プロテーゼは簡単に除去でき、その後の修正も比較的簡単です。
安全性に優れています。
鼻尖の皮膚への障害が少ないことです。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のデメリット
肋軟骨ほどではないにしろ、プロテーゼ周囲に石灰化がおこります。
耳介後部と採皮部位に若干の傷跡が残ります。
シリコーンを使用するため、これを嫌う人には施術できません。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術時間と術後経過
プロテーゼと耳介軟骨・真皮移植による隆鼻術の麻酔は、局所麻酔ですので入院は必要ありません。静脈麻酔を併用してなるべく意識を落とすこともできます。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術は、2時間程度です。術後1時間ほどお休みになり、ご帰宅できます。
隆鼻術の手術後、鼻にはシーネ(ギプス)を施しますが、5日目には外します。
また、軟骨採取部位の耳介には変形を防ぐ、特殊ガーゼ加工をします。特殊ガーゼは、5~7日で除去します。
鼻孔内の傷の抜糸は、術後10日に行います。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術での腫れは、概ね退くのに1~2ヶ月を要しますが、術後10日ぐらいには一般的な生活に支障がない程度に落ち着きます。ただし、鼻先の硬さは6ヶ月程度続きます。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術のアフターフォロー
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の術直後は鼻だけでなく、やや目が腫れることがあります。帰宅時にはマスクが必要と思いますが、酒井形成外科にご用意してあります。
軽い洗顔や洗髪、シャワー浴は、手術の翌日から可能です。もし、鼻を固定しているテープが取れてしまった場合にはご来院下さい。
抜糸までは、ご自分で消毒していただきます。洗顔や洗髪後消毒液と抗生剤ローションで鼻孔と耳の後ろを消毒するだけで大丈夫です。抗生剤ローション等はご用意しています。
テープ固定がはずれたら、お化粧も可能です。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の術後の通院は、手術翌日、5日目テープ固定はずし、10日目抜糸、3週間目と2~3ヶ月後に術後チェックを行います。
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の詳細情報
施術時間 | 2時間程度 |
---|---|
施術後の通院 | 翌日傷のチェック。5日目にテープ固定外し。10日目抜糸。3週間目と2~3ヶ月後にデザインチェックを行います。 |
腫れについて | 完全に退くには約1ヶ月程度かかります。ただし、10日程度で日常生活に支障はない程度になります。 |
カウンセリング当日治療 | 可 |
入院の必要性 | 静脈麻酔使用時に必要の可能性があります。 |
麻酔 | 神経ブロック、局所麻酔(静脈麻酔も可) |
洗顔、洗髪 | 手術ご5日から可 |
シャワー浴 | 手術次の日から可 |
リスク(合併症・副作用 等)
- 感染
- 細菌やウイルス等による炎症。
- 血腫
- 術後、皮下や臓器からの出血が起こり、血液が貯留することです。
- 出血
- 術後やや多い量の出血を見ることです。
- 内出血
- 術後概ね起こる皮下の血液の組織への浸透で、自然に吸収されます。
- 瘢痕(創跡)
- 全ての皮膚切開創は、多少の傷痕が残ります。肌質的に目立つ人もいます。
- 肥厚性瘢痕(ケロイド)
- 傷痕の中でも、膨らみや硬さが強いものです。原因は、遺伝性のため術前には防御することができません。ただし、治療法がございます。
- 色素沈着
- 瘢痕の一つですが、色素(メラニン)の沈着が主な原因です。
- アレルギー
- 薬剤が原因のものが多いのですが、金属やテープ等でも発症することがあります。
- 予定形態との差
- なるべく患者さまの意見は取り入れるようにしますが、完全な表現は無理がある場合があります。
- 微妙な左右不対称
- 人間の体は左右不対称であるため、手術後にも左右不対称は起こりえます。
- 鼻尖部皮膚が薄く変化する
- プロテーゼの劣化、カルシウム沈着
- プロテーゼの露出
- 耳介変形
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術費用
項目 | 治療内容 | 金額 (消費税込) |
---|---|---|
プロテーゼ、軟骨、真皮、隆鼻 | プロテーゼに耳介軟骨と真皮を合わせ移植する。鼻尖軟骨を調節する | 880,000円 |
他院プロテーゼ抜去 | 220,000円 | |
隆鼻セット | プロテーゼ、耳介軟骨、真皮、移植、コルメラストラット(鼻柱形成)、(鼻中隔延長術) | 1,210,000円 |
症例1プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の症例
隆鼻と鼻尖の形態形成を希望された患者さまです。耳介軟骨と真皮脂肪、薄く削ったシリコーンプロテーゼを利用しました。
この症例の価格
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻 モニター70.4円(税込)
この症例のリスク・副作用
感染、肥厚性瘢痕、血腫、色素沈着、左右差、斜鼻変形
症例2プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の症例
かつてプロテーゼで隆鼻していましたが、合併症でプロテーゼを除去した既往があります。今回は人工骨での隆鼻を希望された患者さまです。鼻根部の骨膜下にアパセラム・ミドルグラニュールを移植しました。
この症例の価格
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻 モニター 70.4円(税込)/p>
この症例のリスク・副作用
感染、肥厚性瘢痕、血腫、色素沈着、左右差、斜鼻変形
症例3プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の症例
下向きの鼻尖(鉤鼻)を少しだけ上剥きにしました。また鼻尖を高く尖らせました。鼻柱にも軟骨を移植し鼻中隔延長を施しました。
この症例の価格
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻 鼻中隔延長 モニター 123.2円(税込)
この症例のリスク・副作用
感染、肥厚性瘢痕、血腫、色素沈着、左右差、斜鼻変形
症例4プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の症例
鼻翼の縮小とともに鼻尖形成、隆鼻を希望された患者様です。隆鼻と鼻尖形成はシリコーンプロテーゼに耳介軟骨と真皮を接着し形成しました。鼻翼縮小は鼻翼縁の皮膚が厚かったため皮膚切除を加えました。わずかにアップノーズのデザインにしました。
この症例の価格
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻と鼻翼形成 モニター価格 123.2円(税込)
この症例のリスク・副作用
感染、肥厚性瘢痕、血腫、色素沈着、左右差、斜鼻変形
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術のポイント
- プロテーゼに固定する軟骨の位置を十分吟味する。特に鼻柱下点の位置が美しい鼻の決め手になる
- 軟骨採取部位の耳介には変形を防ぐため特殊ガーゼ加工(タイオーバー)を施す
- 軟骨付きプロテーゼは骨膜下と鼻中隔にしっかり固定する
- 特に鼻尖部の軟骨形態を慎重に作成する。意外に下方での高さを作ることがポイント
- 軟骨が大きめの場合や、以前のプロテーゼを除去し安全な隆鼻に切り替える手術では、鼻尖部の皮膚が薄く変形している場合もあり、その時は側頭筋膜や真皮脂肪を変形した皮下に移植する場合がある
耳介軟骨を採取
プロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術では、まず耳介軟骨を採取します。
耳の後ろ側から切開を入れ、耳介軟骨を採取します。
片方から親指の爪ほどの大きさの軟骨が採取できます。
採取された軟骨は、場所により厚みがある所と薄い所がありますので、うまく形を形成します。
耳介は縫合したあと変形を防ぐ為にガーゼを挟み込むように縫い合わせます。
これをタイオーバーといい、術後5~7日で除去します。
この手技により軟骨を採取された耳介はほとんど変形しません。
コンポジット(複合体)(プロテーゼ+真皮+耳介軟骨)の作成
コンポジット(複合体)の移植
切開 オープン法でアプローチします。鼻柱の中心にV字切開から鼻孔内大鼻翼軟骨に沿て切開を伸ばします。
皮下剥離 鼻柱と鼻腔内の切開から丁寧に皮下を剥離します。剥離は鼻翼軟骨、鼻尖軟骨上を剥離し鼻骨では骨膜下を剥離します。
皮下剥離 鼻柱と鼻腔内の切開から丁寧に皮下を剥離します。剥離は鼻翼軟骨、鼻尖軟骨上を剥離し鼻骨では骨膜下を剥離します。
コンポジットを鼻骨骨膜下、鼻背軟骨上に移植します。
シーネを添えてプロテーゼと耳介軟骨による隆鼻術の手術を終了します
最後に鼻にシーネを添えて手術を終了します。シーネは5日間テープで固定しておきます。
鼻尖(鼻先)をプロテーゼだけで尖らせる事はとても怖い!
マイケルジャクソン氏が白人の鼻に憧れ、鼻筋を高く通し、鼻尖部をしっかり尖らせすぎたため後年「鼻がくずれた!」と多くの人々を叫喚させた事は、まだ有名な話です。
これは、鼻尖部を尖らせるのに、プロテーゼの先端のシリコンを硬く厚く尖ったものを使用したためなのです。そのため、鼻先の皮膚の血行が悪くなり内側から皮膚が薄く変形してしまったことが原因です。
そこで、まず、プロテーゼは固形シリコンでもとても柔らかい物を使用します。鼻根部は柔らかいシリコン製プローテーゼが骨膜下にキチンと収まるよう丁寧に入れます。
鼻尖部は徹底的に薄く加工します。そこに後自分の耳の軟骨を採取し、形態を整えて加工したプロテーゼに接着します。時にこの自家軟骨を装着したプロテーゼの鼻尖部に側頭筋膜や真皮脂肪で包みます。
プロテーゼだけの隆鼻では鼻根部を高くすることはできても、鼻尖部を尖らせることは危険です。しかし、この方法ではご自分の身体の組織の一部で鼻尖を形成することができます。